【美作人】津山城西の古民家でギャラリーNishilma25を展開する桜井由子さん

東京出身、海外生活も長かった桜井さん

父が鏡野町、母は美作滝尾出身だという桜井由子さんは、東京都町田市育ち。
パリやオランダ、イタリアなどで見聞を深め、2016年帰国。
同年3月から重要伝統的建造物群保存地区にも指定されている,
津山市西今町の古民家を改装など準備を進め
「NishiIma25ヴァンサンク」を2018年オープンした。
海外に行ったのは、パティシェだった彼女が
本場の料理を見て学ぼうとしたからで、旅の目的は「食とアート」だったという。
そんな彼女が、パリでカルチャーショックを受けた。
なんという町なんだろう、そこには日常生活の中にアートがあふれている。
路上で絵を描いている人、カフェで演奏している人とそれを楽しんでいる人たち、小さな子どもたちとでもイキイキとアートの話ができる。
アートに対するレベルの高さに驚いた桜井さん。
そんなアーティスティックな状況にいた桜井さんは、
ある日フランスのヴァロリスに住む作家と出会い、創作の第一歩を歩み始める。
1999年に、彼のアシスタントとして活動を始め、創作とともに、キュレーターなどの作品、作家のプロデュースを学んだ。
2000年前半には、桜井さん自身の作品の基礎となるミニマルアートに没頭。
ミニマルアートとは、主観を取り払いシンプルに色形を
表現するものととらえていいかもしれない。
2002年に自身の作家活動を始め、2006年にはヴェネチアやパリに修行に行った。
純粋にアートの浸透や発展を目的とする活動を目指し、
アートとビジネスとは似て異なるものと考えていた。
そして
2011年、イタリアから日本に帰国。
ここまで錚々(そうそう)たる履歴を書き連ねると、とても近寄り難く、
アートに関する知識がないと会えない、話ができない人に思われそうだが、
全くその反対。と言っていいほどフランクに話ができて
笑顔の可愛らしいギャラリーオーナーだ。
ギャラリーだけではなく、NishiIma25には、カフェスペースもあり、
飲み物や彼女手作りのスイーツ、ランチなども楽しめるし、
比較的安価に宿泊できるゲストハウスも併設している。
桜井由子さん作品

素敵な作品を津山で展示していきたい

取材時、NishiIma25では金原寿浩(ジャスミン)さんの作品の展示中だった。
「金原寿浩 海の声ーいまだ波高しー」彼の作品は
東日本大震災で被害に遭われた人々を悼んでいた。
米軍基地問題に苦しみ、悲しみや抵抗を表していた。
どの作品も緻密に描かれており、理不尽に命を落としたり、
理不尽に生活を脅かしているものに対しての抗議の気持ちが表れている。
(太平洋戦争、県民を巻き込んだ地上戦を含む)
金原さんの作品は、見るものの心を打つ、考える時間を与えてくれる、
特に東日本大震災に学校管理下でただ一つ児童の犠牲者を出した
大川小学校(宮城県石巻市)の在りし日の姿を描き出した
「こっちにおいでよ」は、高台に避難した児童からのメッセージだろうか、
桜満開の小学校の風景はなぜか優しく悲しい。
また、渋谷スクランブル交差点、国会議事堂そして東電本社に
核廃棄物の詰まった黒い袋を上空から置ききれないほど積み上げる
「ちょっと置かせて」シリーズは圧巻。
いまだ核の脅威から逃れられない
地元の人たちの思いの詰まったシリーズとなっている。
金原さんの展示は6月12日で終わるが、
彼の名前で検索してみれば作品の一部を見ることができるのでぜひお勧めしたい。
また、(ジャスミン)とあるのは、彼が麗しき女装家であるということ。
ロングヘアのウイッグに可愛らしい髪留め、
ふわふわした生地の花柄模様のスカートにブラウス。
女性であることに、社会的にしばられ、
こうであるべきとされた女性の気持ちを少しでもわかりたいとのことで
女装をしているらしい。
彼のSNSでその華麗なる姿を見てほしい、
とてもチャーミングな、おじさん(失礼)だ。
桜井由子さん作品2

次の展示も楽しみだ

「津山でぜひ最後の展示をしたい」
と桜井さんに、言い残していた日下賢二さんの木版画の展示会が、
6月25日(土)から、8月28日(日)までNishiIma25で開催される。
日下賢二さんは、津山市出身で棟方志功にも師事した版画家。
戦後間もなく東京から津山に疎開した版画家・永礼孝二の夏期講習で
木版画の多色刷りと出会い、生涯創作意欲を失わなかった日下さん。
「斬新な中にほのぼのとした、ほっこりできるようなポエティック、
またどこかエロティックな作品をぜひご鑑賞ください。
日下さんの作品には情熱・愛がありますので、
美術収集されている目の肥えた方にも堪能していただける作品ばかりです」
と桜井さんは自信にあふれていた。
日下賢二木版画展ポスター
公の美術館がない津山市で、NishiIma25ほどの
社会性を持ったギャラリーはないのではと思う、
オーナー桜井由子さんのセンスと主義主張が感じられる所になっている。

彫刻家の父桜井敏生への思い。

ギャラリーに常設展示している彫刻作品は、
由子さんの父で石の作家として知られる桜井敏生さんの作品。
冷たく感じられる石の感触は、つるりと心地よくゴツゴツと力強かったり、
精密に彫られたあとは鋭かったり、いろいろなものを語りかけてくれるようだ。
一つの石の頭像には、生きてきた証が見えたり、天真爛漫であったり、
深刻な表情に見えたりするから不思議だ。
「私は3人姉妹の真ん中で育ち、男の子のようにスポーツしたり
外遊びをしたり活発な子どもでしたが、絵を描くことが好きでした、
父はその情景をいつも温かく見守ってくれていました」そう語る由子さん。
「いい意味で放っておいてくれたし、叱られたこともない。
父が小さなアトリエで粘土をつけている(塑像の仕事)後ろ姿を見てきました」。
今、敏生さんは病気と戦っている。生命の火を懸命に灯している。
「父母のふるさと、津山で頑張るのは私の責任だと思っています」
ふるさとに住む責任、アートを広める責任、理不尽な社会問題に対する責任。
「海外で得たすべての経験を私なりの表現方法として責任を持ちたいし、
由子という私の名前の所以は自由を由と表し、
自由でいるためには責任を持つという事を常に意識しています」
そう話す桜井さんはまじめに目を背けることをせず向き合っていた、
そんな彼女はとても美しかった。
(取材日2022年6月3日)

NishiIma25(西今25)

お店の前で
〒708-0046
岡山県津山市西今町25
木曜日から日曜日 11:00〜17:00
電話、090-5907-1663
ホームページは下記の通り
外観
お庭

取材を終えて

桜井由子さんはとても強い人だ。
決してぶれない強い意志を持っている。そしてフットワーク軽く、
納得のいかない事に関して行動が早い。
私は今までに何度か、ギャラリーに行って数々の作品を見せてもらったが、
今でも心に残っている作品がある。アートに詳しい方ではない私だが、
震えが来るような心動かされる作品に出会えるのは稀だ。
町じゅうにアートがあふれている今。
どれがアートでどれがアートではないなどと言い合うのは、
私は違っていると思っていて、心が動いたかどうかで自分なりに
お気に入りを見つけている感じだ。
一人一人想いが違うように、好きな作品も違っていい。
高いお値段がついているものが全てすきとは限らない。
自分なりの好きな作品に出会えたら、それはもうラッキー!
そして
美味しいコーヒーを飲みながら鑑賞できるなんて超ラッキーだと思っている。
そして
桜井さん、すごくしっかりしているように書いちゃったけど、、、
ちょっと天然さん? ちょっとずっこけてる?
そんな感じの桜井さんにぜひ会いに行ってみてほしい。
(ライター・武本真寿子)
著作制作
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