護り絵倫大 (まもりえみちひろ)
久永通宏さん
津山城(鶴山公園)の紅葉は見頃
今年こそ多くの観光客に来て欲しい、 と願うのは観光関連の人たちだけではなく津山市民の多くが願って いるに違いない。
津山城はなんといっても観光の目玉、 観光駐車場に目いっぱい大型バスが止まっている数年前の光景を今 後も見たいものだ。

津山城から東方面に歩いて5分程度。
重要伝統的建造物群保存地区に指定されている津山市城東地区への 西からの入口付近の林田町の角にあるのが「護り絵倫大」 さんの林田町ギャラリーだ。
3階建てのすっきりとした建物の1階ギャラリーの扉を開けると、 護り絵倫大ワールド全開。

幼少期に絵画を習った事が今の絵につながる
倫大さんは子どもの頃には小児喘息がひどく、 肺を大きくする効果があると言われるスイミングの教室などに通っ た、また絵画教室で絵を描く楽しさを知ったと言う。
「小さい頃に絵を習った事が、今の絵の方向性にも影響している」 と話す。下書きなどのデッサン力は素晴らしいし、 なんと言ってもポップなものからキャラクターのビビットであり乙 女チックなパステルカラー、 仏画や神話の神などを描くスモーキーな色合いなどは彼独特のセン スが光っている。
子どもの頃から刷り込まれ培われてきたセンスは今まさに異彩を放 っていると言ってもいいだろう。
子どもたちが絵を描く事を諦めないでほしい
倫大さん自身が子どもの頃から絵画に親しんできただけに、 子どもたちに対する目線は優しい。
共感し波長の会う子どもたちの絵を展示発表する場に活用してもら えればいいなと思っている。そう話す倫大さん。
「ギャラリーと名をつけていますが、 この小さな空間で子どもたちの絵を人に見てもらいながら、 人の集まる場所になったらいい、 ビジネスマンの方には絵のある空間で商談をする場になってもいい と思う、 城東地区の人たちが集っていただける場になったらいいなと思って います」。
一言一言控え目な彼の言葉だが、 地域に思いを寄せる気持ち子どもたちへのやさしさにあふれていた 。子どもたちへのやさしさは、 未来に希望を託している事なんだなと感じられた。

この秋、「つやま城東まち歩き」と
「令和作州城東むかし町」 にギャラリーを解放
城東の旧出雲往来(街道) に多勢の人が歩いているのを見るのはありし日繁栄していた昔なが らの町を彷彿とさせるようでいいものだ。
秋には、城東上げての大きなイベントが二つ行われた。
道ゆく人たちが、次々とギャラリーを訪れていたが、 高齢者3人のグループが倫大さんの護り絵を熱心に見ていた。
シャイな彼は少し離れたところにいたのだが、 3人とも彼に絵の技法を聞きたがっていたようだ、 護り絵の不思議な感覚の絵は炭を混ぜているなど、 丁寧に説明をする。
絵手紙をされていると言う3人は、 ご自身の絵のちょっぴり自慢もしながら、 彼の技法などを熱心に聞いていた。
彼は、どんな人にも丁寧だ。 営業トークのような決まった言葉などない、 彼自身の思いがその人に合った話をするように言葉を選んでいるよ うに思えた。
絵が好きな人、創作が好きな人、町が好きな人。 彼の誠意に触れて絵画に囲まれ話に行くのも和みになるなあ、 と彼の説明を聞きながら思った。


絵が大好きで眠れなくなることも
「次は何をしよう、こんな事あんな事をやりたい、 題材はこんな事がやりたいと考えていると眠れなくなることもあり ます」。
彼が手がけるのは、 お店などから依頼をいただいた壁絵やチョークアート、 もちろんシンプルな額に入った護り絵など多岐にわたる。
壁絵はお店の雰囲気やオーナー様の意向に合わせ絵柄を提案し、 数週間から数ヶ月かけて制作する。その作業は丁寧で緻密だ。
また、チョークアートでは入学や卒業にあたって、学校や幼稚園、 保育園などの黒板に先生や生徒、 保護者の思いが伝わるような提案をして思い出に残るものを、、、 との思い。
生徒、 児童が自分たちで制作したいならば指導や助言もしていきたいとの 意向なので、素敵な演出を計画したい方にはぜひおすすめだ。


そして「護り絵」
自ら「護り絵倫大」と名前をつけた倫大さん。
その基本となっているのが幕末、明治の浮世絵師・ 月岡芳年の浮世絵だと言う。
江戸から明治への大動乱時代伝統的な浮世絵の画法を大切にしなが らも時代の流れに乗り人気絵師になった芳年に影響を受けたと言う 倫大さんの護り絵は圧巻だ。
中でも私が感銘を受けたのは、芳年は慶応3年に描いた「祐天沙弥 放牛舎桃林」をモチーフとした護り絵。
ストーリーは、 愚鈍な祐天は知恵を授かるために成田山の御堂に籠り断食修行をし ていたところ不動明王が現れ、 剣を飲んで悪い血を出せば知恵を授かる事ができるが、 長い剣と短い剣のどちらを選ぶと問われ、祐天は長い剣選んだ、 気を失った祐天が目覚めた時には即座に経文を唱えるほどの知恵を 授かったとされる。と言うものだ。
倫大さんは自分なりにその逸話を読み込み独自の世界観を持って、 一筆一筆丁寧に時間をかけて護り絵を制作していく、その作業は「 行」を行っているような神聖で敬虔なプロセスがある。
そして生まれた絵画は神々しく畏敬の念に似た圧倒的な存在感で見 る人を魅了するのだ。
そのほかにも、 京都にまつわる画題として伏見稲荷大社に狛犬の妖怪、 京都タワーに巻きつく龍、 神社の境内を走り回る猫又など不思議さに思わず見入ってしまう作 品も多数ある。
ギャラリー内は照明で明るくしているので怖がることはないが、 不思議な気持ちになれる空間は津山市では唯一のものではないかと 思う。


林田町ギャラリーに行ってみよう。
林田町ギャラリー
津山市林田町32-3
不定休なのであらかじめ倫大さんに連絡をしてください
駐車場はありませんが津山観光センターから歩いて5分程度、

作品も観られるInstagramはこちらから
取材を終えて
護り絵倫大さんとは、先日のつやま城東まち歩きで知り合った。
とても静かで優しい眼差しの人だ。
ご自身の絵の説明も決して押し付けではなく、自慢もしない。
私はすぐに、「この人を記事にしたい」と思った。
それぞれの特性や特徴で、 いつも陽の当たる場所に
自分から入り込んでいける人もいるし、 そうではない人もいる。
倫大さんは後者だ。
そして自らを売り込もうという欲もさほど大きくないようで、
取材のアポを取ろうと、 昼間電話をしてしまった
そして昼間取材ができないかなと考えてい た私だが、ふと思うと、
彼には彼で昼間のお仕事があったのだと、 、、
すぐにかんがえの浅さに恥ずかしいと思った。
アーティストだけで生計を立てているわけではないのだ、
フラフラ出かけて取 材をするという生活ではないのだ。
これから地域の文化、芸術シーンを担っていく若者たちに、
もっと絵を描かせてあげたい、 もっと絵のことだけを考えさせてあげたい。
なんとかならないものか。
文化、芸術、 音楽を若者が牽引となる美作地域が構築されれば
豊かな町、 豊かな心になれるんじゃないかな。
そんな思いを捨てきれない。
(ライター・武本真寿子)
編集著作
