地域で活躍する人を紹介【美作人】きびの会・トトロの家 理事長川島和子さん

ある日突然息子がひきこもる人になった

五月晴れ、空がまぶしく那岐の山々がくっきり浮かび上がる、
そんな景色が見える「トトロの家」。
特定非営利活動法人 津山・きびの会は、
ひきこもり人や家族の支援を地道に行なっている。
その活動はまさに地道で長く細い道のりだ、
一朝一夕に目に見えるものではなく、
年月をかけ、意思を持ち何事もゆるし、
包み込むやさしさが大切。
津山・きびの会代表の川島和子さん(津山市)が、
いわゆるひきこもりと向き合ったのは
ご自身の息子さんが就職2年目にしてひきこもり状態に
なったことから始まる。もう20年も前のことだ。
それはある日突然の事、、、「え。どうしたんだろう」
と訳がわからなかったと言う。
その頃ひきこもりという言葉さえ知らず、
社会的にも知られていなかった。
川島さんは、自分の育て方が悪かったのだろうかと
自分を見つめるための学びを重ね、
息子さんは病院での治療後よくなり働きに出るが、
仕事は長続きしなかったと言う。

家族会の立ち上げ、

池上正樹さんの著書と出会う

『「8050問題」高齢親子“ひきこもり死“の現場から』
など引きこもりに関する著書を多く出版、
講演活動も勢力的に行う池上正樹さん。
池上正樹さんの記事に出合った川島さんの夫は
KHJ岡山きびの会の立ち上げに参加した。
KHJ岡山きびの会はひきこもり人と家族の会だ。
そして
2005年に津山で「津山・きびの会」を立ち上げた。
2007年、NPO法人となり、不登校の子を持つ親や働きにくさを
抱えた若者たちの居場所を津山市野村で立ち上げた。
助成金を得て、自然農や講演会、コンサートなど活動を繰り広げ、
多くの若者たちが元気になって再び歩き始めた経過があるという。
時代は経過して、ひきこもり人の問題は、深刻度を増して
8050問題」は、今では大きな社会問題になっている。

ピアサポーターの育成、行政への働きかけ

きびの会では、ピアサポーターの育成を働きかけている。
「ピア」とは仲間、友だちの意味であり、
同じ経験をした仲間が共に寄り添い歩くことを意味する。
彼らはまだまだ全てを乗り越えたわけでもなく、
全てを知っているわけでもない。ただつらさはわかる、
もどかしさはわかる、伝えきれない苦しさはわかる。
経験した人でこそだ。
先日、福祉関係団体の講演で川島さんから2人の
ピアサポーターのお話を聞かせてもらえるチャンスをいただいた。
ピアサポーター研修を終えている川島さんと2人の話は、
経験したから身をもって話せる心に迫るものがあった。
彼らは社会参加できず、自室にひきこもり出られない
ひきこもり人は、命がけでひきこもっているという。
他者とのコミュニケーションがうまくできず孤独で孤立してしまう。と現状を話し、社会全体が温かい目で見てくれることを
望んでいると人として普通
当たり前の要求を切々とお話しされた。
それには、行政の協力も必要で、津山・きびの会では
今までに2度(2020年と2021年)津山市に要望書を出している。
それは、ひきこもりに対する理解と支援。相談窓口の一本化。
当事者の心情を理解してくれる相談員
ピアサポーターや当事者家族相談員)の配置など。。。
普通に生きてゆく要望だ。

津山・きびの会の頼りになる人、

新家大器雄さん

新家さんは、川島さんを支える津山・きびの会には
なくてはならない人だ。
きっと、困っている人を見たら手を貸さなきゃって思うタイプの人。
ご本人は「餅つきなど力のいる作業や
イベントの時に力を貸すくらい」と思っていたそうだが、
会の広報活動や運営、長く民生委員などをしておられ
色々な知識も豊富で何よりも安心感がある人。
黄色のレシート

黄色のレシートコーナー募金活動の一環

大型ショッピングモールのイエローレシートキャンペーンにも
参加しており、毎月11日には個人の買い物の
黄色いレシートを振り分けられた棚に入れるだけで、
小さなボランティア基金の一部となる。
その事も毎月忘れずSNSで発信するので
「今日は行かなきゃ」って思う人もいるという。
まだまだ周知されていないきびの会の事を、
発信し理解を深めているのも彼の大きな貢献活動だ。
もちろん前出のイベントなどでも新家さんは頼られていると言う。
そして今、会の収入源となっているのは、
長崎県特産の全粒粉手延べそうめん、島原小町の販売。
画像を掲載するのでぜひご協力をお願いしたい。
売り上げの一部が津山・きびの会の活動資金になる。
手延素麺島原小町

購入のお問合せはお電話かホームページで

ここでも新家さんの顔の広さと今まで築いてきた
信頼関係が大きな助けになっている。
たっぷり入って2400円なのでご協力をよろしくお願いしたい。

今後の課題

「8050問題」最近の新聞記事では「9060問題」と言われる、
ひきこもり親子の高齢化の課題だ。
80とは、80歳台のひきこもり当事者の親の年齢
50とは、当事者が50歳台だという事。
親の高齢化による体力や認知機能の衰え、経済力もだろう。
当事者もひきこもりが長引き、解決法も見つからないまま
年は重ねてゆく。ひきこもった年数も、自分の歳も。
そして彼らは、およそ30年前に就職が
超氷河期といわれた時代に合致する、
その事が彼らになんらかの影を落としているのか。
若いピアサポーターの育成や行政の対応などが、
疲れ切った80歳台の親に安心感を与えるもので
あって欲しいと切に願っている。
「周囲の方たちの温かい声かけが、彼らの力になりますので、
ご近所にひきこもっている人や家族がいたら、天気がいいねとか、
元気でやってるの?など声をかけてほしい、
津山・きびの会はどんな人でも受け入れます、
居場所がないなんて言わずにトトロの家に来てみてください」
川島さんは、真剣な眼差しで私を見て言ってくれた。
みんなで楽しくお食事

みんなで楽しくお食事

(取材日2022年5月6日)
特定非営利活動法人 津山・きびの会
トトロの家
〒708-0863
岡山県津山市小桁137-2(小桁バス停近く)
活動時間 木・土曜日 13:30〜16:00
川島さん携帯 090-7591-3294
新家さん携帯 090-3631-4174
そうめんの注文も受け付けます。
きびの会では、相談活動(主に土曜日)、
居場所活動(木、土曜日)、
就労支援活動、啓発活動も行っています。
津山きびの家

津山きびの家

詳しくはお電話か、ホームページをご確認ください。
「津山トトロの家」で検索してください。
取材を終えて
誰でもひきこもりになる可能性はある。
誰でも風邪をひく、誰でもケガをするその可能性があるように。
私の友だちは少々つらいことがあっても
カラオケでパーっとしたら治るよ」と。
お酒を飲む人は「一杯飲んで忘れるんじゃ」という人もいる。
私は以前から、そうなれない私に気づいていた、
もうずいぶん若い頃からだ。
カラオケや楽しいことしたら治る、お酒で忘れる、
そうできる人が羨ましかった。
太古の昔から、きっと人の悩みはあったし、
その悩みは社会情勢によって変化していき多様性を
持つようになった。
本質的な解決はなかなか難しいのだ。
全部自分の悩みのない生活になってしまったら、
その世界はまさに自分中心に回っている
わがままな世界になってしまうだろう。
立ち上がれない時
泣きたい時
ぶん殴ってやりたい時
色々ある。
人に立ち入られたくない時だって
人と会いたくない時だって
でも、わかってくれる人がいるかも知れないから、
ちょっとだけ覗いてみよう。
やさしい空気が吸えるかも知れない、
やさしい人に出会うかも知れない。
ゆっくりぼつぼつでいいから、誰もいそがせないから。
先のことや未来のことなんて、きっとどうにかなる。
ちょっと、外の空気だけ吸ってみよう。
そんな場所かな。
トトロの家って。
川島さん、新家さん、きっと温かい目で見てくれる。
そんな場所。
(ライター・武本真寿子)
著作制作